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もうかれこれ、ガラスに携わって、20年になってしまいました。
思えば、私がこのグラスアートを始めて間もないころ、ちゃんとした工房を持っておらず、設備の整った外部の工房にデザインを渡して、製作をお願いしていた時期があります。
単純な絵柄のサンドブラスト加工なら問題もないのですが、立体であったり、テクスチュアーを大事にした作品などの場合、なかなか職人さんにイメージが伝わりにくく、試作をお願いしても時間とコストが掛かりすぎたり、思うように作品が出来上がらないことにずいぶん悩んだものでした。
今から十数年前というと、硝子という素材の持つ可能性に対する注目や評価はまだまだとても低いもので、私の提案する意匠やデザインは、ほとんどタブーとして扱われることが多く、硝子業界ではあまりポジティブに受け止めてもらえなかったように思います。
小さくてもいいから、まずは自分の工房を持ち、自らの手元から送り出していく作品づくりを目指すことで道を切り開いていくしかなかったのです。
以来、作品の規模がどんなに大掛かりになろうとも自社工房での制作という姿勢へのこだわりは堅持してまいりました。
今は、私がイメージしたいと希っている制作のための環境をどうにか整えることができているように思います。

マリエンバードは、英字では、mari-and-birdと表記しているのですが、birdって何ですかとよく聞かれます。
さあ、なんなのでしょうね。
私がこれまで制作した作品の中で、もっとも強く心の印象に残っている作品が二つあり、そのどちらもモチーフが<フェニックス>だったものですから、そのゆかりなのです、と取りあえず注釈させていただきましょうか。
“いつでも風を感じながら、自由に空へ飛び続けたい”そんな思いがあるのはたしかですから。

2007年4月 野口真里